消費者の健康への高い関心を受け、健康関連食品の市場成長にはめざましいものがあります。健康関連食品の中でも、保健機能食品は国が健康関係の表示を許可したものです。機能性表示食品は、この保健機能食品の中の一つです。
機能性を表示できる機能性表示食品の届け出には何が必要なのでしょうか。ここでは、機能性表示食品を届け出る上での考え方を解説します。
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食品の機能
そもそも、食品の機能には栄養に関する機能、おいしさに関する機能、身体を調整する機能の3種類があります。栄養に関する機能とは炭水化物、タンパク質などの栄養素が健康の維持増進や発育に影響するものです。おいしさに関する機能は、好き嫌いに関係することから嗜好的機能とも呼ばれます。
嗜好的機能には味や匂いの他に歯ごたえのように、食べたときに人が感じることも含みます。身体を調整する機能が生体調節機能です。生体調節機能には血圧をコントロールする機能、ストレスを和らげる機能、成長を促進する機能、免疫を増やしたりガン細胞ができることを抑える機能、ホルモンの分泌を助ける機能、消化酵素の分泌を調整する機能などがあります。
保健機能食品制度
国は食品の安全性や有効性の基準を定め、これを満たした食品に機能を満たしていることを表示して販売することを認める制度を設けています。それが保健機能食品制度です。保健機能食品制度での機能性とは、生体調節機能を指しています。
保健機能食品制度における機能性の表示では、有効性を表示することが求められます。栄養に関する機能や嗜好的機能に関する機能を表示して販売されている食品は、一般食品に分類されます。栄養補助食品、健康補助食品、影響調整食品などがそれに当たります。
保健機能食品には特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品があります。特定保健用食品は安全性や機能性について消費者庁が審査して承認したものです。特定保健用食品はトクホと呼ばれ、消費者庁の許可マークが表示されています。
栄養機能食品は国が定めた基準に適合した特定の栄養成分を含み、それを補給・補完するための食品です。トクホは機能性を国が審査、承認することから開発から発売までに時間がかかるのが難点でした。消費者のニーズに応じる多くの食品の販売を可能にする方策として考え出されたのが機能性表示食品です。
制度の検討にあたっては、米国のダイエタリーサプリメントの表示制度を参考にしました。トクホが国の審査、承認を経て機能性を表示するのに対して、機能性表示食品は事業者の責任で科学的根拠に基づいた機能性を表示できる食品です。
機能性を表示するためには、販売前に安全性や機能性の科学的根拠に関する情報などを消費者庁長官へ届け出なければなりません。事業者の責任で証明することによって、開発から販売までの時間が短縮できるようになりました。
機能性表示食品が消費者の信頼を得られる訳
トクホは、安全性や機能性などについて人の試験を含めて国の審査を受けて承認されます。機能性表示食品は、事業者の責任で機能性を表示する食品です。しかし、国の承認を受けていないにもかかわらず、機能性表示食品の市場規模はトクホに迫る勢いがあります。
機能性表示食品が消費者の信頼を得ているのは、情報公開による透明性があるからです。インターネットの普及により、消費者は多くの情報を得て比較できるようになりました。消費者庁に届け出た機能性表示食品に関する安全性や機能性に関する科学的根拠は、消費者庁のホームページからいつでも確認できます。
この科学的根拠は製品にも表示されています。これらによって、機能性表示食品は消費者の信頼を得て市場が拡大していると考えられます。
機能性表示食品の科学的根拠
トクホの科学的根拠は国によって行われる最終製品での人による試験が大きな比重を占めます。
機能性表示食品では人による試験ではなく、論文などを引用することで科学的根拠とすることも可能です。
安全性についても同様に、動物や人による安全性試験または安全性に関する論文などの既存情報を用いて評価します。トクホが人による試験が必ず必要なことに対して、機能性表示食品の科学的根拠は試験による確認を必ず求めるのではなく、学術論文などの引用できる科学的根拠を提示できれば科学的根拠とすることができるのが特徴です。
機能性表示食品として届け出る食品の基準
機能性表示食品として届け出ることができるのは、対象食品となるか否かを判断した食品です。その上で安全性の根拠が明らかで、生産・製造と品質管理ができていなければなりません。さらに、健康被害の情報収集体制を整え、機能性の根拠を説明できて初めて届け出が可能になります。
これらの根拠は最終的には製品に表示されなければなりません。病人を対象とした食品は対象外です。機能性成分を含むことによって機能性を期待できる食品が対象になります。ただし、特別用途食品や栄養機能食品とアルコールを含む飲み物などは対象外です。
条件に適合すれば、生鮮食品を含むすべての食品が対象となります。安全性は医薬品との相互作用についての科学的根拠の提示をしなければなりません。また、広く食べられているか否かの情報、安全性に関する論文なども提示します。
当然、動物や人を用いた安全性試験の結果で示すことも可能です。生産・製造と品質管理については、食品を生産・製造するすべての施設ごとに取組み状況の届け出が求められます。
この際、届け出内容の根拠となる資料や製造管理を分析する際に発生する記録などは求められたら速やかに提示できるように保管しておかなければなりません。健康被害の情報収集体制は、食品によって発生した健康被害について消費者や医療従事者などから連絡を受ける体制のことを言います。
そのため、製品には健康被害情報の対応窓口部署の名称と連絡先の電話番号を必ず表示します。機能性の根拠についてはどのような科学的根拠によるか、どのような人がどのように摂取すると、どのような機能性があるかを具体的に記述します。
機能性表示食品の届け出には準備が大切
機能性表示食品は、事業者が食品の安全性や機能性に関する科学的根拠を消費者庁に届け出ることによって、機能性を製品に表示することのできる食品です。製品への機能性は事業者の責任で表示することになります。そのため、機能性表示食品として届け出る食品にするためには安全性や機能性に関する科学的根拠を整理した上で、製造・生産体制を整えて健康被害の情報収集体制を整えておく必要があることを覚えておきましょう。